理不尽な上司との向き合い方

このエントリーは、今後投稿する予定の「使えない部下との向き合い方」と対になっています。お読みになられる方の置かれた立場やお悩みから、いずれかから順番にお読み頂けると幸いです。
文書上では、「部下=自分」という表現で記載します。

■理不尽な上司とは?

上司から理不尽な指示や指摘を受け、ストレスを貯めた経験は、仕事をしている人なら誰でも一度は経験しているのではないでしょうか。この投稿では、理不尽な出来事に遭遇したときに、それをどのように受け止めれば良いのか考えてみます。

まずは「理不尽」という言葉の意味から考えてみましょう。
理不尽:(goo辞書より)
[名・形動]道理をつくさないこと。道理に合わないこと。また、そのさま。
「―な要求」「―な扱い」
では、「道理」の意味も調べてみましょう。
道理:(goo辞書より)
1 物事の正しいすじみち。また、人として行うべき正しい道。ことわり。「―をわきまえる」「―に外れた行為」
2 すじが通っていること。正論であること。また、そのさま。「言われてみれば―な話」

という事で「理不尽な上司」とは、「物事の正しいすじみち」「また人として行うべき正しい道」にあわない要求、扱いをする上司と言えますね。
では、「理不尽な上司」は、何故「物事の正しいすじみち」「また人として行うべき正しい道」にあわない要求、扱いをするのか、考えてみましょう。


■上司のどんなところが理不尽なのか考える

まず考えなければならないのは、自分が思う「物事の正しいすじみち」「また人として行うべき正しい道」と、上司のそれとがマッチしているかという事です。

例えば、自分が上司から指示を受けた業務に対し、自分なりの「物事の正しいすじみち」を考え仕事を進めたとしても、上司が考える「物事の正しいすじみち」と異なるものであった場合、上司からはその旨の指摘を受けるでしょう。業務内容や上司のスタンスによって、1から10まで上司自身が考える「物事の正しいすじみち」を辿らないとNGな場合もあれば、業務のゴールさえ共有出来ていれば、辿る道筋には文句を言われない場合もあると考えられます。

また、「人として行うべき正しい道」も、上司・部下に限らずその人その人のパーソナリティや、それまでの人生の過程で経験した考え方やコミュニケーションのあり方で、かなり内容が変わってくると思われます。単純な例を挙げると、入社後にしごかれ叩き上げで昇進した上司は、同じような考え方・コミュニケーションで部下に接すると思われ、メディアでも「草食世代の部下と、バブル世代の上司」等の揶揄で取り上げられているのを目にします。

よって、自分が思う「物事の正しいすじみち」「また人として行うべき正しい道」と、上司のそれとがアンマッチであれば、もし部下が「上司が理不尽だ」と思っていた場合でも、上司は「理不尽」とはかけらも思っていない事が多いのです。また、上司自身が「理不尽」と分かっていたとしても、意図的に「理不尽」な接し方をしているケースさえ少なからず存在すると思われます。

多少の認識のズレなら何とか我慢は出来ますが、これが大いにズレているとなかなか辛いもので、下手をするとメンタルにもダメージが及びかねません。もしそんな状態になってしまったら、自分はどのように仕事に向き合えば良いのでしょう。


■理不尽な上司に潰されない為にやるべき事

まずやるべき事は、自分が考える「物事の正しいすじみち」「また人として行うべき正しい道」が、誰にとって正しいかを考える事です。

先に書いたように、それが自分にとって「正しい」と考えられる事でも、上司にとって正しくない事であれば、それを上司に受け入れる事は無いでしょう。
しかし上司も自分と同じ人間ですから、上司の考える「正しい事」が必ずしも正しいとは限りません。そこで自分が考えるべき事は、「正しい」と思う事が所属する組織や企業にとって正しい事かを冷静に検証する事です。

個人的には、まず「数字を味方に付けて、自分の裁量で仕事が出来る範囲を増やす」の「■自分の仕事を「数字」で表現する」に書いた5つの指標「売上」「利益率」「品質」「生産性」「スピード」の観点で、「正しい」事を証明出来るか、またこの5つのうちどれを重点に置いているのか考えます。そして、それが所属する組織や企業にとって受け入れられるものなのかを考えます。最後に、上司の理不尽な指示を前述の指標に照らし合わせ、どのような観点で指示が出されているのかを考えます。

ここまで一通り考慮すると、自分にとって「正しい」と思われる事が自分以外の人たちにどのように受け止められるかが、概ね見えてくるでしょう。

例えば、自分にとって「正しい」と思われる事が、5つの指標「売上」「利益率」「品質」「生産性」「スピード」に照らし合わせた結果、組織や企業にとって受け入れがたいものであれば、自分の思いは独りよがりになってしまうでしょう。
また、上司の理不尽な指示が前述の指標から組織や企業の臨む方向にマッチしていれば、その理不尽さの原因は「上司」ではなく、組織や企業が求める内容が起因している事になります。

実際には、これらの指標が部下、組織、上司で全くあわないような事はあまり無いと思われます。あったとすれば、部下、組織、上司のいずれかがドあほうか、よほど相性が悪いのでしょう。しかし、5つの指標の何処に重きを置くかでは、三者三様で少しずつズレが生じる事は良くある事ではないでしょうか。自分が「品質」に重きを置いた「正しさ」を主張しても、「利益率」や「生産性」に重きを置いた上司に否定されるというパターン等が考えられます。


■認識のズレを埋める方法

このようなズレが原因であれば、あとはそのズレを埋めて行くしかありません。
埋め方には大きく3つのパターンが考えられ、「自分が正しいと思う方向に上司を巻き込んで行く」か、「上司が正しいと考える方向に歩み寄る」か、または「いずれも厳しいので、ズレの少ないと思われる企業・組織に移動する」のいずれかになるかと。

一番難しいのは、「自分が正しいと思う方向に上司を巻き込んで行く」事でしょう。先にも述べたように、上司は「理不尽」とはかけらも思っていない事が多いのですから。それでも5つの主張から、自分自身の「正しさ」にある程度自信が持てるのであれば、その正しさを上司に伝える価値はあると思います。

しかしそれを伝える際には最大限の注意が必要です。そもそも上司とのコミュニケーションが、既に自分が「理不尽」と感じるような質になってしまっているのであれば、真正面にぶつかってもそれを受け入れてもらえる可能性は低いと思うのです。
ですから、もしそれを伝えるのであれば、自分が思う「正しさ」を選択する事で、所属企業や組織にとってもメリットが生じる事をまず伝える等、言い方は悪いですが「上司をだます」くらいの慎重さで臨むのがちょうど良いのではないかと思います。

うまく上司をだましてしまえば、自分の正しさを受け入れたその上司も運命共同体になる訳で、簡単に話がひっくり返る事は無いでしょう。また、うまくだませたのに、最終的には自分の「正しさ」が受け入れられなかったとしても、その理由が今まで自分が知らなかった業務上の理由や組織のしがらみであったりする事を上司から教えてもらえるかもしれません。もしそのような情報が入手出来れば、それはそれで自分がその後の組織で生き抜く為の糧となるでしょう。

直属の上司をうまくだます事が難しいようであれば、例えば「人間「システム監視マシーン」からの脱出」に書いたように、周囲の人間や直属の上司のひとつ上の上司を巻き込むのも良いと思います。

一方で、「上司が正しいと考える方向に歩み寄る」、または「いずれも厳しいので、ズレの少ないと思われる企業・組織に移動する」パターンは、自分自身の判断のみで選択出来ますから、先の選択肢に比べればハードルは低いでしょう。
こちらは、「理不尽 上司」というキーワードで検索をかけるとQAサイトの回答やメディアの記事が沢山ヒットしますので、自分の感性にあう処世術をお探しになられるのがよろしいかと。

また、厳しいお話になりますが、そもそも自分にとって「正しい」と考えられる事を客観的に分析する事が出来ない(しない)、または自分が担当する仕事が分析出来るレベルに至っていない場合は、刃物を持つ相手に素手で臨むのと同じようなものですので、まずはある程度それが出来るレベルに至るまで業務能力を上げる為に努力するか、分析するまでに至らないまでも、自分と感性があうと思う企業・組織に移動するのが、自分にとって幸せな選択になるのではないかと。
よく映画等では、刃物を持つ悪党を正義の味方が素手で撃退するシーンを見かけますが、実際には腕の立つ格闘家でも、刃物を持った相手に無傷で勝つのは厳しいという話を良く聞きます。


■最終的には「相性」の問題?

ここまで「理不尽な上司」との向き合い方について、敢えて感情論を表に出さず、なるべく論理的に物事を考えられるような方向で記載を行いました。しかし、「人間は感情の動物」といわれるように、いくら理詰めで物事を考えても、最終的には「感情」で納得出来なければ、残念ながらその場から離れない限り「上司の理不尽さ」と付き合い続ける事になるのでしょう。

良く言われる事ですが、「理不尽な上司」と「感情」は、結婚生活に似ていると思えるのです。上司との出会いは、結婚で言えば自ら選択した出会いではない「お見合い結婚」に相当する場合が圧倒的に多いのでしょうが。

結婚してみたら、思っていた人と違う、またはそれまで見えなかったところまで見えて、それが受け入れがたい等、良く聞く話ではあります。またそれを受け入れるか、はたまたサクっと離婚するか、子供が成人するまで仮面夫婦を続けるか等、皆一様な選択肢を取るのではなく、その人の性格や置かれた立場で様々な選択がされていますね。

自分としては、「絶対に許せない、一歩たりとも譲れない」という事柄でない限りは、世の中の大概の夫婦がするであろう、お互いの「納得が行かない」事に対して話し合い、互いに歩み寄る努力をまずすべきだと思うのです。
ですからこれをお読みに頂いた皆様も、諦めてしまう前に、まずは「理不尽な上司に潰されない為にやるべき事」をやってみて、そこで分かった「認識のズレ」を「埋める方法」を考えてみて下さい。

1日の半分以上職場にいるのですから、その間ずっと「仮面夫婦」の状態で同じ職場で仕事をするのはとても辛い事でしょう。ならば自分に出来る事をした上で、それでも「感情的に納得出来ない」のであれば、「サクっと離婚」してしまうのが、お互いの幸せになると思うのです。
仕事に置き換えれば、企業内で移動願いを出すか、転職になりますね。


当該投稿内容に関連して、上司や組織の理不尽さについて語っている書籍をご紹介致します。それぞれ第二次世界大戦時の日本軍の失敗を元に、上司や企業が何故理不尽な選択を取るのかを分析した内容となっており、双方共に読み物としても楽しめました。

なぜ上司とは、かくも理不尽なものなのか (扶桑社新書)
菊澤 研宗
扶桑社
売り上げランキング: 429367

組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)
菊澤 研宗
日本経済新聞出版社
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ここまでご覧頂き、有り難うございます。
当エントリを含め、これまでの転職履歴で得た経験から、仕事に向かい合う為に必要なテクニックや、メンタリティ・思いを抽出し、「お仕事サバイバル」のページにまとめました。
また、「お仕事サバイバル」のネタ元となる、就職からアラフォーの現在に至るまでの8回に渡る転職履歴について、「転職履歴」のページにまとめています。 
それぞれ、あわせてご覧頂けますと幸いです。

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