出世するメリット、デメリット

最近は出世したくない人が増えているらしいですね。
google先生に「出世したくない」で検索かけてみると、多種多様なお話が出てくるけども、今回はおじさんが自分の経験から思ったことを書いてみようと思います。


■メリットとデメリットを比べてみる

おじさん世代は「出世=良いこと」という暗黙のインプットがあるんですが、何故それが崩れつつあるのか考えてみました。
まず、出世することのメリットから。

  1. 給料が上がる。
  2. 仕事の上での裁量が上がる。仕事をこなすために使えるリソースも増える。
  3. 社内外のステータスも上がる。周囲の扱いも変わる場合も。
  4. 自慢できる(笑)

これらは説明するまでもなく、書いたまんまですね。
続いて、出世することのデメリットを。

  1. 責任が増える。
  2. 裁量やリソースが増える分、それまでしてきた仕事と同じこと、同じ成果を出しても評価されない。
  3. 出世すればするほど理不尽なことも増える。

2.や3.はこれだけでは分かりづらいので具体例を出してみましょう。
2の例:
A君は係長から課長に昇格した。それまでは新卒1名と社歴3年の社員の面倒を見ていたが、課長に昇進することで6名ほどの課を任されることになった。
これまでは課長だった上司の指示に従い、3名のチームで仕事をこなしていれば相応に評価されたが、課長になってからは個別の具体的な指示はされず、部長から四半期ごとのコミットメントが通達されるようになった。
それまでは、最悪部下2名の仕事がうまく進まなくとも自分自身が直接手を貸す等のフォローでなんとかなる業務ボリュームだったが、さすがに四半期ごとのコミットメントと6名分の仕事の直接的なフォローは、自分一人でとてもこなせるボリュームではない。
それに加え、課内の予算管理や人員の評価、決済等の管理業務も増加し、相対的に現場仕事を縮小せざるを得ない。このような状況で、A君はどうやったらコミットメントを果たすことが出来るのか判らず、頭を抱えた  

このように、課長になったら今までの仕事の仕方では課の業務が回らなくなることが多々あるのです。自分もこちらでプレイングマネージャーとして課長の仕事をしていましたが、昇進前に比べれ、自分の仕事に割り当てられる時間はわずかでしたね。

課長になったら何をすればよいのかも、誰も手順を教えてくれるわけでもありません。マネジメントシステムが導入されているような会社は、管理職になるまでは基準や手順書に従い仕事をしていればそこそこに評価されるのでしょうが、管理職になった瞬間に、手順書通りに仕事をしているのかを管理し、かつ管理職として会社に課のコミットメントを課せられるようになるのです。

そう、課長向けのマニュアルなどは存在せず、自分自身で組織をコントロールする術を身に付けるしか無いのです。

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3の例:
Bさんは課長から部長に昇格した。それまでは常駐の委託業者を含め15名のプロダクトの開発を担当する課を管理していたが、部長に昇進することでこれまで所属していた課に加え、会社が販売するプロダクト開発からデリバリまでを統括する立場となった。Bさんは部長就任後、前任者の業務プロセスを磨き上げることでプロダクトの採算性・品質も向上し、売上は順調に伸びていた。
ところがその特定ジャンルのプロダクトに新たに法規制が掛かり(または規制緩和が行われ)、これまでと同様のビジネスモデルが通用しなくなった。
Bさんは当初自社の強みである採算性・品質のさらなる強化を試みたが、コスト削減は限界に至る一方で、その影響から品質はかえって悪化してしまった。そこで再びビジネスモデルの再構築に取り組んだが、それまでのプロセスに最適化されてしまっている組織の再構築に時間を要し、その間に競合他社がBさんの会社より先に新しい環境下で立ち上げたビジネスがトップシェアを握り、Bさんの部署のプロダクトはジリ貧となってしまった。
経営陣は人事の斬新によりこれまでのしがらみを断ち切ることを決断し、Bさんはあえなく閑職への移動を強いられた。

部長まで昇進すると、自分自身が直接原因でなくとも責任を求められることが格段に増えます。また明らかにハードルの高い目標をぶん投げられても、それをそれなりに形にする手腕も求められます。

上記のケースでは、Bさんは誰もが認める成果を出しながらも、自分ではどうしようもない外的な環境変化に翻弄され、結果弊職に追いやられてしまいました。運といえばそれまでの話ですが、Bさん本人からすればたまったものではないでしょう。これが経営陣レベルまで行くと更に厳しく、会社に留まることもままならなかったりします。

出世した上司にこんな様を見せつけられれば部下はげんなりしますよね。部下の観点からは、出世することのリスクのデカさを目の前にすれば、余程のベネフィットがないと意欲も沸かないと。
しかも最近では、唯一の形として残るベネフィットだった「給料が上がる」事も怪しくなりつつあるようです。


■「能力給」が出世のメリットを相殺する

昔は役職と給与って連動していましたよね。少なくとも自分はそうだと思っていました。

ところがここ10年位で、組織のフラット化が推進される事と共に担当業務と役職のギャップを埋める為に給与テーブルが改定され、同期かつ同じ役職で差異が生じるだけではなく、役職が異なっていても最下位ランクと最上位ランクで給与が逆転するケースが出てきているようです。

例えば、部長職で給与テーブル上最下位のランクより、課長職で給与テーブル最上位ランクの方が高給取りだったりするというお話です。自分が過去務めていた会社今務めている会社の双方が同様の制度を取り入れており、また知人からも同様のケースが複数あると聞きました。

なので、職位が上がったからといって必ずしも給与も上がるというわけではないのです。
結果として、役職だけ上がっても給与は増えず、責任や理不尽なことばかり増えてしまい、昇進なんて良いことなんかない!という話が出てきても仕方がない状況なんだろうと思います。
そりゃ今までと同じ仕事していて給与だけ増えるほうが楽ですもんね。


■出世で得られるメリットはプライスレス?

出世に対して散々なこと書いてきましたが、実は個人的には「だから出世なんかしなくて良い」という話には同調しかねるんですよ。

出世を諦めれば、その環境に安住することは出来ても、変化をもたらすことは難しくなります。仕事の内容も判断も価値観も、時間の経過とともに自分の立ち位置に合わせて最適化され、自然とそこから外に目が行かなくなるのです。

自分自身ではなかなか気づくことが難しいのですが、はたから見てるとよーくわかってしまいます。で、思ってしまうのです。そんな予定調和な毎日がずっと続いて楽しいのか?飽きないか?と。

一方で、昇進とともに環境が変わることはストレスが貯まりますが、平社員から係長、課長、部長と役職が上がる毎に、自分の置かれる環境が大きく変わります。また、出世をすれば少なくともそれまでに比べ転がす仕事の規模は大きくなるわけで、関わる人達も同様に、大きな仕事を転がしている人たちが増えます。

そういった仕事や人たちと関わることで、新たな世界や観点や得られたりすることが自分は楽しかったりするのです。ずっと同じことをやっていると飽きてしまう性分なので、万人には当てはまらないと思いますが、こればっかりは本読んでも人の話を聞いただけでもなかなか得られない「プライスレス」なメリットだと思うのです。

上記に共感してもらえる人には、辛いこともある中でぜひ出世を目指して欲しいです。
あ、あとは「デメリット」に書いたようなことに耐えられるドMな人でないとやってられないかもしれませんね。これ大事だと思いますので、書き足しておきます(笑)。