10000時間の法則と、己の器を知る事

■他人との実力差に愕然とした事

前回の投稿で、「中二病全開でバイクのレーサーになることを考えていた」というお話を書きましたが、実はゲーム会社に就職して1年くらいはその思いを引きずっており、暇を見つけて峠やサーキットへ走りに行っていたのでした。しかし、筑波サーキットで開催されたとある走行会で、SUZUKI Gooseを駆る水谷選手がコースインもそこそこに、並み居る参加者を赤子の手をひねるかのごとくごぼう抜きしていき、自分もまったくついていくことが出来ず、直感的に「自分がこの道で食っていくのは土台無理な話だ」と悟り、その道で食っていくことを諦めました。

また、仕事の中でも同じような出来事がありました。ここの職場に勤めていた時に、PMを張っていた人は自分とさほど歳が離れていなかったのですが、三度の飯よりプログラムが大好きというような人で、自分の実力はその人の足元にも及ばず、この時も直感的に「自分が想像の付く範囲内では、この人を追っかけても追いつけない」と感じました。
それまでは就職した際の初めての仕事がプログラミングだったことから、どこまで行けるか自分でも試してみたい気持ちもあり、プログラマーとインフラ担当SEのどっちつかずの状態でした。しかしこの時の思いがその後もずっと頭に残っていたことから、インストラクター時代の強みを生かす方向で、プログラミング方面ではなくインフラ構築や業務設計に軸足を置けるよう、少しずつですが軌道修正をしていきました。

この方はその後自身で会社を興され、現在もその会社の社長を務められています。この投稿を書くにあたって最近の様子はどうかなーなどとググってみたところ、技術系のWebサイトでGAEのSQLラッパー(SQL4Gに関する記事がその会社が関わる形で連載されてました。相変わらずすごい。



■自分の実力を把握した上で、進むべき道を選択する為には


Blogを読んでくださっている皆様は、このような挫折経験はありませんか?
自分の例のように、直感を信じて結果自分で納得できる方向に進めたのであればラッキーですが、ひょっとすると上記の出来事で折れず、レーサーまたはプログラマーの道を突き進んでいた方が幸せだったのかもしれません(まぁ無いとは思いますが)。逆に選択を誤ると、自分が望む領域到達するのに多くの時間を要してしまうか、最悪は途中で断念せざるを得なくなる事も十分に考えられます。
まぁ「それもまた人生」と言えなくもないですが、失敗がなかなか許容されない今の世の中においては、あらかじめ避けられる問題なのであれば、ハマる前にうまい事回避したいですよね。

また、転職の話題に絡んで最近よく「メンター」に関する記事を見かけます。例えばこちらの記事には「理想的な」メンター像が記載されていますが、実際の仕事の現場においては、ここまで都合よく面倒を見てくれるような「メンター」に出会える可能性は低いのではないかと。
たとえば自分の場合は、前述のように自分ではとても手に届かないような高みに至った人と出会えたことはとても幸せなことでしたが、一方でそのほかの現場で出会った直属の上司には、残念ながら「将来こんなイカした上司になりたいス」と思うような人はいませんでした。どっちかというと、上司と部下で「担当している仕事の領域が違うから、こっちはこっちの仕事をするし、お前はお前の仕事をしっかりやっておけ」という具合で、割と放置されていたような気がします(その分好きにやらしてもらっていた事の方が、自分にとっては望ましかったと思っています)。

ここまでだらだら書いてしまいましたが、要は、仕事において自分が理想とする領域に至るまでに、ちょっとやそっとじゃ超えられない壁が現れたとき、どうしたらいいかというお話です。前述の通り、正直メンターが当てになるとは思えず※※、最後は自分で決めなければならないと思うのです。

※※メンター」専門の教育を受け、会社として後輩や部下の育成に最大のインセンティブが得られる、または与えられているか、「メンター」そのものをビジネスとして、外部委託を受けたりしているケースはまた別の話になると思います。
しかしこれら条件を満たしていない限りは、いきなり会社の中で「お前メンターやれやよろしく」言われても、うまく廻らんと思います。


■「10000時間の法則」で考えてみる

自分で自分の進むべき道を選択するためにはどうしたらいいのか。せめて指針となる考え方はないかと調べてみたところ、参考になりそうな「10000時間の法則」というお話が出てきました。
検索結果をいくつか見ると、だいたい以下のような内容が読み取れます。

  • ビートルズやビル・ゲイツは、自身が望む能力をつける為に10000時間の学習・練習等積み上げ、更に運(タイミング?)があったから成功が出来た
  • その他の成功者を追跡調査したところ、概ね10000時間の積み上げがあれば、その道のプロフェッショナルと言えるところまでたどり着く事が出来る
  • 語学習得では1000時間の学習が目安と言われている
  • 新人をピンキリのキリまで育てるには、だいたい480時間(1日8時間換算で60日)程度かかる

検索でヒットする記事をざっと見た限り、「質が伴わないとどんだけ時間かけても意味ない」という事に一言も触れられていないところが何とも微妙な感じではあるのですが、時間の概念を上手く使っているなと思いましたので、これを日常の仕事に当てはめて、自分が進むべき道を選択しなければならなくなった時の参考情報として使う事が出来るよう、ブレークダウンしてみましょう。

仮定:

  • 1日の稼働を8時間とし、うち特定の業務※※※に5時間集中し、会議出席やメール・報告等の業務に3時間を要するものとする。
  • 1ヶ月を20営業日とする(週休2日前提)

※※※特定の業務は、所属する部署内で自分が担っている仕事そのものです。例えばプログラマー、設計、製造、品質管理、研究、人事、経理、営業、マーケティング等、特定のジャンルで括れる仕事であれば何でも構いません。

上記の仮定を元に、自分が関わっている仕事を後どのくらい積み重ねる事で、プロフェッショナル(=10000時間)な領域まで達する事が出来るのか、考えてみましょう。

  • 新人からピンキリのキリまで至るまで、4.8ヶ月(480時間÷5時間÷20営業日)
  • そこそこ仕事ができるようになるまで、10ヶ月(1000時間÷5時間÷20営業日)
  • プロの域に到達するまで、8.3年(10000時間÷5時間÷20営業日÷12ヶ月)

上記の時間を元に、自分自身の仕事で必要とされる能力に対して、今まで業務上どのくらい時間をかけているか、またこの先どのくらいの時間が掛かるのか考えてみると、将来の自分の身の振り方の目安になるのではないかと。

例えば、先に自分が書いたケースを例に挙げてみましょう。

  • 走行会で出会った水谷選手は、その当時で既に40歳を超えており(一旦)引退をしているにもかかわらず、自分がまったくついて行けなかった。今まで自分が走行会や峠に走りに行った時間を仮に1000時間程度とすると、少なくとも1日5時間かけて練習しても、7年後にやっと同じ土俵に乗れるかどうかというところか。
  • 自分とさほど歳が離れていないPMが、自分では到底追いつけないほどのプログラミングスキルを保つ優秀な人だった。今まで自分がプログラミングに関わっていた時間を仮に2000時間とすると、そのPMに追いつくにはあと6年前後の時間が掛かる。6年後に自分が、今目の前にいるPMと同等の能力を備えていたとして、それが6年後の自分にとって望ましい事か?(望ましいと判断するケースも多々あると思います。しかし、比較対象となったPMの6年後は、更なる高みにいってしまっている可能性もあります)

上記はあくまで例ですので、これに「アサインされた業務の特性」や「人事考課等の外部要因」が絡んでくると、それが計数的に働き「太く短い」または「細く長い」人生を歩む事も多々あると思います。
しかし、自分の感覚では普通に仕事に関わっていて「1人前」と言われるまでに要する期間と概ねマッチしているように感じられ、また世で言われる「出来る人」はおそらく業務以外の時間でも「プログラム大好きで自宅でもコーディングしまくり」とか「業務に関わる資格取得の為に勉強している」等、自分が望む領域に少しでも早く近づく事が出来るよう、何らかの行動を起こしているんだろうと思われます。

如何でしょうか、今の自分がおかれている立場から将来の道筋を考える際には、ある程度参考になる数字となるのではないかと思うのですが、この投稿を読んで頂いた方からも所感を伺ってみたいです。よろしければ是非、blogへのコメントやTwitter等でのフィードバックを頂ければと思います。


ここまでご覧頂き、有り難うございます。
当エントリを含め、これまでの転職履歴で得た経験から、仕事に向かい合う為に必要なテクニックや、メンタリティ・思いを抽出し、「お仕事サバイバル」のページにまとめました。
また、「お仕事サバイバル」のネタ元となる、就職からアラフォーの現在に至るまでの8回に渡る転職履歴について、「転職履歴」のページにまとめています。 
それぞれ、あわせてご覧頂けますと幸いです。

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